痩せているのに無呼吸症候群?体型だけじゃないリスクと対策を徹底解説!

治療

「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」と聞くと、「太っている人がなる病気」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。しかし実際には、痩せている人でも睡眠時無呼吸症候群を発症するケースは少なくありません。特に日本人は骨格的な特徴から、体型に関係なく気道が狭くなりやすい傾向があるため注意が必要です。

SASは、眠っている間に呼吸が一時的に止まる、または極端に浅くなる状態が何度も繰り返される病気で、日中の強い眠気や集中力の低下、高血圧や心疾患のリスク増加といった深刻な健康問題につながります。

「私は痩せてるから関係ない」「BMIは標準だから安心」と思っている方ほど、実は気付かないうちに症状が進んでいるケースがあるのです。

本記事では、痩せ型の人がなぜ睡眠時無呼吸症候群を発症するのか、その主な原因を解説し、あわせて自宅でできる対策や病院での対応方法までわかりやすく紹介します。
「痩せているけど、もしかして…?」と少しでも感じている方は、ぜひ読み進めてみてください。

  1. 原因① 骨格や顔の形による気道の狭さ
    1. 顎が小さいとどうなる?
    2. 鼻呼吸が難しい顔の構造
    3. 痩せていても油断できない
  2. 原因② 筋力の低下と加齢の影響
    1. 痩せ型でも筋力は低下する
    2. 睡眠中の筋弛緩で起こるリスク
    3. 中高年以降は特に注意
  3. 原因③ 遺伝的要因・鼻の構造の影響
    1. 家族にSAS経験者がいる場合は要注意
    2. 鼻の構造が原因で口呼吸になっていることも
  4. チェックリスト:痩せ型でも無呼吸のリスクがある人の特徴
    1. 痩せ型でも当てはまると危険なチェック項目
    2. 判定の目安
    3. 見落とされがちな「痩せ型のSAS」
  5. 対策① 睡眠姿勢と寝具の工夫
    1. 横向き寝のすすめ
      1. 横向き寝のポイント:
    2. 枕の高さと硬さを見直す
      1. 枕選びのポイント:
    3. 寝具の通気性や湿度も意外と重要
  6. 対策② 筋トレや舌のトレーニング
    1. 舌の筋トレ①:舌押し上げトレーニング
      1. やり方:
      2. 効果:
    2. 舌の筋トレ②:くちびる巻き込み運動(オーラル筋トレ)
      1. やり方:
      2. 効果:
    3. 簡単な顔まわり筋トレ:あいう体操
      1. やり方:
      2. 効果:
    4. 継続が大事
  7. 対策③ 病院での検査と治療のすすめ
    1. 睡眠時無呼吸症候群の検査方法
      1. 簡易検査(自宅)
      2. 精密検査(終夜睡眠ポリグラフ:PSG)
    2. 診療科はどこに行けばいい?
    3. 治療の選択肢
  8. まとめ:痩せているからこそ見落とされやすいSASリスク
    1. 本記事のポイントまとめ
  9. 参考記事

原因① 骨格や顔の形による気道の狭さ

痩せ型の人が睡眠時無呼吸症候群を発症する最大の要因のひとつが、骨格や顔の形による気道の狭さです。特に日本人に多いとされる「顎が小さい」「下顎が後退している」タイプの人は、痩せていても気道が狭くなりやすく、無呼吸状態が起こりやすいのです。

顎が小さいとどうなる?

顎の骨格が小さい、または下顎が引っ込んでいると、舌の付け根(舌根)や軟口蓋(喉の奥の柔らかい部分)が睡眠中に後方へ落ち込みやすくなります。すると、喉の奥にある「上気道」と呼ばれる空気の通り道が狭くなり、空気の流れが妨げられてしまいます。

この状態が続くと、いびきが出るだけでなく、完全に空気が通らなくなり「無呼吸」状態になるリスクもあるのです。

鼻呼吸が難しい顔の構造

また、顔の骨格によっては鼻腔が狭い場合もあり、鼻づまりになりやすい人もいます。鼻呼吸がうまくできないと、口呼吸になりやすくなり、舌が後方に下がりやすくなります。このように、骨格と気道の関係は密接であり、体脂肪とは無関係に無呼吸のリスクを高める要因になります。

痩せていても油断できない

「太っている人=脂肪で気道が圧迫される」というイメージは正しい一方で、痩せていても構造的に気道が狭い人は、同等かそれ以上のリスクを持っていることもあります。特にアジア人(日本人)ではこの傾向が強く、BMIが22以下でも睡眠時無呼吸と診断されるケースは多く報告されています。

原因② 筋力の低下と加齢の影響

痩せているにもかかわらず睡眠時無呼吸症候群を発症するもう一つの重要な原因が、筋力の低下です。特に加齢とともに、舌や喉まわりの筋肉(咽頭筋、軟口蓋筋など)が衰えると、気道を開く力が弱まり、眠っている間に気道がふさがりやすくなります

痩せ型でも筋力は低下する

体重が少ない=筋力がある、というわけではありません。特に体脂肪が少ない痩せ型の方でも、日常的にあまり体を使っていなかったり、口元や喉の筋肉を使う習慣が少なかったりすると、局所的な筋力は弱くなる傾向があります。

特に以下のようなケースでは、筋力低下による気道閉塞が起こりやすくなります。

  • 加齢により咽頭周辺の筋肉が自然と弱っている

  • 運動習慣がない

  • 柔らかいものばかり食べていて、咀嚼筋が使われていない

  • 口呼吸が多く、舌をしっかり使っていない

睡眠中の筋弛緩で起こるリスク

人は眠っている間、筋肉の力が抜ける「筋弛緩」状態になります。このとき、喉や舌の筋肉が十分に働かないと、気道が自重でふさがってしまうのです。

これは太っている人だけでなく、痩せていて筋力が弱い人にも当てはまるメカニズムであり、見た目の体型では判断できないリスクです。

中高年以降は特に注意

40代以降になると、体全体の筋肉量が少しずつ減っていく「サルコペニア」が始まります。喉まわりの筋肉も例外ではなく、年齢を重ねるごとに無呼吸のリスクは高まるとされています。

痩せ型で若い頃は平気でも、中年以降に突然いびきや無呼吸が目立ってくるケースもあるため、年齢とともに定期的なチェックが重要になります。

原因③ 遺伝的要因・鼻の構造の影響

睡眠時無呼吸症候群は、生活習慣や体型だけでなく、遺伝や先天的な顔や鼻の構造にも大きく影響される病気です。痩せていてもSASを発症する人の中には、家族に同様の症状がある人や、生まれつき鼻腔や顎が狭い人が多く見られます。

家族にSAS経験者がいる場合は要注意

ある研究によれば、親兄弟に睡眠時無呼吸症候群を患った人がいる場合、その子どもも発症する可能性が高いとされています。特に以下のような共通点が見られる場合は、遺伝的な体質が影響していると考えられます。

  • 家族に強いいびき、無呼吸と診断された人がいる

  • 顎が小さい、または後退している

  • 鼻づまりや口呼吸が慢性的にある

こうした特徴が複数当てはまる方は、痩せ型であってもSASのリスクを疑う必要があります

鼻の構造が原因で口呼吸になっていることも

また、鼻の通りが悪い構造的な要因も、無呼吸を招く要素の一つです。たとえば以下のような状態があると、無意識に口呼吸が習慣化してしまい、睡眠時に気道がふさがりやすくなります

  • 鼻中隔湾曲(鼻の仕切りが左右どちらかに曲がっている)

  • 鼻炎やアレルギーで慢性的な鼻づまり

  • 鼻腔が狭く、もともと空気の通りが悪い

鼻呼吸ができないと、口を開けたまま眠ることになり、舌が後方に落ち込みやすくなるため、いびきや無呼吸が起こりやすくなるのです。

チェックリスト:痩せ型でも無呼吸のリスクがある人の特徴

「体重が軽いから、睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは無縁だろう」と思っている方も、実は気づかないうちにリスクを抱えているかもしれません。ここでは、痩せ型の人でもSASの可能性がある兆候を、簡単なチェックリストにまとめました。

痩せ型でも当てはまると危険なチェック項目

チェック項目 当てはまるか?
寝ているときにいびきをかくと言われたことがある
朝起きたとき、口が乾いていることが多い
日中、強い眠気を感じることがある
顎が小さい、または下顎が後退している
鼻詰まり・鼻呼吸がしづらい
寝ても疲れが取れない感覚がある
睡眠中に息が止まっていると指摘されたことがある
寝汗をよくかく、寝相が悪い
集中力が続かない、物忘れが多くなった

判定の目安

  • 2~3項目当てはまる:SASの可能性を少し疑うレベル。睡眠環境を見直し、記録をつけてみましょう。

  • 4~5項目以上当てはまる:無呼吸症候群のリスクが中程度。医療機関での相談・検査をおすすめします。

  • 6項目以上当てはまる:高リスク。早急な睡眠検査(自宅・病院)を検討しましょう。

見落とされがちな「痩せ型のSAS」

痩せている方は「病院に行くほどでは…」と遠慮しがちですが、無呼吸のリスクは体型だけで決まりません。放置していると、高血圧や心疾患の引き金にもなるため、違和感がある場合は早めの対応が大切です。

対策① 睡眠姿勢と寝具の工夫

痩せ型の人が睡眠時無呼吸症候群を改善・予防するためには、睡眠中の姿勢や寝具の見直しが非常に有効です。特に、無意識のうちに気道が塞がってしまうのを防ぐには、仰向け以外の姿勢を意識することがカギとなります。

横向き寝のすすめ

最も手軽で効果的なのが、横向きで寝ることです。仰向け寝の場合、重力の影響で舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込み、気道を塞いでしまうことがあります。特に顎が小さい痩せ型の人はその傾向が強く、横向き寝を習慣にするだけで無呼吸の発生頻度が下がることもあります。

横向き寝のポイント:

  • 左側よりも右側を下にして寝る方が消化にも良い

  • 背中にリュックやタオルを当てて仰向けを防止

  • 抱き枕を使って横向き寝の姿勢をキープする

枕の高さと硬さを見直す

枕が高すぎたり、逆に低すぎたりすると、首の角度が不自然になり、気道が狭くなる原因になります。自然な気道の確保には「後頭部が少し沈み込み、首の角度がまっすぐになる程度の高さ」が理想です。

枕選びのポイント:

  • 横向き時でも肩と首のラインが一直線になる高さ

  • 柔らかすぎず、しっかりと首を支えてくれる硬さ

  • 頭を動かしても枕の形が崩れにくい安定性

最近では、いびき対策用の専用枕も市販されており、試してみる価値は十分あります。

寝具の通気性や湿度も意外と重要

気道をふさぐ要因として、室内が乾燥している・鼻が詰まるといった環境要因もあります。加湿器の設置や、鼻腔を広げるテープの使用、通気性の良い寝具の選定も快眠につながります。

対策② 筋トレや舌のトレーニング

痩せ型で睡眠時無呼吸症候群を発症する方の多くは、喉や舌まわりの筋肉が弱っていることが原因の一つです。これを改善するために有効なのが、口腔周囲の筋肉を鍛えるトレーニングです。自宅で簡単にできる方法をご紹介します。

舌の筋トレ①:舌押し上げトレーニング

やり方:

  1. 舌の先を上顎の前歯の裏に軽く当てる

  2. 舌全体を上顎に押し付けるようにし、10秒キープ

  3. これを1セットとし、10回繰り返す

効果:

舌根の筋力を高め、睡眠中に舌が喉に落ちるのを防ぐ効果があります。


舌の筋トレ②:くちびる巻き込み運動(オーラル筋トレ)

やり方:

  1. 唇をしっかり閉じる

  2. 口の中で「いー」「うー」を交互にゆっくり発音(声は出さなくてOK)

  3. 1セット30回、1日2〜3セットが目安

効果:

表情筋と舌の協調性を鍛え、口呼吸を防ぎやすくなります


簡単な顔まわり筋トレ:あいう体操

「あ」「い」「う」と大げさな口の動きで繰り返す体操です。

やり方:

  1. 「あー」と口を大きく開く

  2. 「いー」と口角を左右に広げる

  3. 「うー」と唇をすぼめて前に出す

  4. これを1セット10回、1日3セットを目安に

効果:

喉や頬まわりの筋肉を総合的に鍛え、気道が開きやすくなるとされます。


継続が大事

これらのトレーニングは、続けることで少しずつ筋力がつき、いびきや無呼吸の軽減に役立ちます。週に数回、寝る前の習慣として取り入れるのがコツです。

対策③ 病院での検査と治療のすすめ

「自分は痩せているから無呼吸とは無縁」と思っていても、いびきや日中の眠気などの症状がある場合は、一度病院での検査を受けることをおすすめします。特に痩せ型の人の場合、見た目では気づかれにくく、放置されがちなのが特徴です。

睡眠時無呼吸症候群の検査方法

病院では、主に以下のような検査が行われます。

簡易検査(自宅)

  • 携帯型の検査機器を自宅で装着して寝るだけ

  • 呼吸の停止回数、酸素濃度、いびき音などを記録

  • AHI(無呼吸低呼吸指数)が測定され、重症度を把握可能

  • 保険適用で、費用は約5,000〜10,000円程度

精密検査(終夜睡眠ポリグラフ:PSG)

  • 医療機関の睡眠センター等で1泊入院して検査

  • 脳波・心電図・呼吸・眼球運動などを同時に測定

  • より正確な診断が可能

  • 保険適用で3割負担の場合、1〜2万円程度

診療科はどこに行けばいい?

睡眠時無呼吸症候群の検査や治療は、以下の診療科で受けられます:

  • 耳鼻咽喉科(鼻や喉の構造的な問題に対応)

  • 睡眠外来・睡眠センター(専門的な検査が可能)

  • 呼吸器内科(CPAP治療の導入など)

初診では、かかりつけ医や耳鼻科で相談し、必要に応じて紹介状をもらうとスムーズです。

治療の選択肢

痩せ型の方にも対応できる治療法として、以下のような方法があります:

治療法 内容 対応度
CPAP療法 就寝時に鼻マスクで空気を送り、気道を確保 中〜重度に有効
マウスピース 下顎を前に出して気道を確保 軽〜中度に有効
外科手術 軟口蓋形成術などで気道拡張 骨格が原因の場合に有効

まとめ:痩せているからこそ見落とされやすいSASリスク

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は「太っている人の病気」と思われがちですが、痩せ型の人にも十分リスクがあります。むしろ、骨格や筋力、鼻や喉の構造といった体の「つくり」そのものが原因となっていることが多いため、体型だけで判断するのは危険です。

本記事のポイントまとめ

  • 顎が小さい・後退している人は気道が狭くなりやすく、無呼吸のリスクが高い

  • 喉や舌の筋力が弱いと、痩せていても気道がふさがることがある

  • 遺伝的な体質や鼻の構造も大きな要因になる

  • 横向き寝やトレーニングなど、生活習慣の改善で予防・軽減が可能

  • 症状が気になる場合は、早めに検査を受けることが重要

いびきや日中の眠気、集中力の低下などに心当たりがある方は、「痩せているから関係ない」と思わず、まずは簡易検査から受けてみることをおすすめします。放っておくと高血圧や心疾患などのリスクにもつながりかねません。

痩せ型でも無呼吸症候群になることは珍しくありません。気づきと行動が、快眠への第一歩です。


参考記事

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