なぜ筋トレがいびき対策になるのか?
いびきと筋トレ、一見すると関係がなさそうですが、実は「喉・舌まわりの筋肉の衰えがいびきの原因になる」ことがあるため、特定の筋肉を鍛えることでいびきが軽減される可能性があるのです。
とくに中高年層では、加齢による筋力低下が進行しやすく、それに伴い睡眠中の気道が狭まりやすくなるという問題もあります。
ここでは、なぜ筋トレがいびき対策になるのかを詳しく見ていきましょう。
いびきの原因は「喉や舌の筋力低下」も関係
いびきは、睡眠中に空気が狭くなった気道を通ることで、周囲の組織が振動して音を発する現象です。
この「気道の狭まり」は、以下のような理由で起こります。
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舌が喉に落ち込む(舌根沈下)
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軟口蓋(喉の奥の柔らかい部分)が垂れ下がる
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喉や口まわりの筋肉が緩むことで空気の通り道がふさがれる
これらの現象は、筋力が低下することで悪化しやすく、特に舌や喉周辺の筋肉が弱くなると、気道が維持されず、いびきをかきやすくなるのです。
睡眠中の気道確保に筋力が重要な理由
私たちは日中、無意識に舌や喉まわりの筋肉を使って呼吸をしています。
しかし、睡眠中は筋肉が弛緩し、気道が狭くなりやすくなります。
このときに筋力が十分にあれば、
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舌が落ち込みにくくなる
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喉の奥の空間(咽頭腔)を広く保てる
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空気の流れがスムーズになり、いびきが軽減
といった自然な気道の確保ができるようになります。
そのため、「いびきを減らすための筋トレ」として、舌・喉まわりの筋力アップが重要視されているのです。
最近では、耳鼻科や睡眠専門クリニックでも「オーラル筋トレ(口腔筋トレーニング)」が指導されるようになっており、医学的にも注目されています。
睡眠中のいびきを軽減する舌・喉の筋トレメニュー
いびきと舌・喉の筋力の関係
いびきは睡眠中に舌や喉の周囲の筋肉がゆるみ、舌根(舌の付け根)などが喉の奥に落ち込んで気道を狭くすることで生じます。空気の通り道が狭まると軟組織が振動していびき音が出るため、舌や喉の筋力を高めて気道を支えることがいびき軽減につながります。
実際、舌や喉の周りの筋肉を鍛える「オロファリンジアルエクササイズ(口腔周囲筋トレーニング)」は医学的にも効果が認められており、ブラジルの大学による研究では3ヶ月間の筋トレ継続によっていびきの頻度と音量が約39%減少したと報告されています。つまり、毎日コツコツと筋トレを行って舌・喉の筋肉を強化すれば、寝ている間の気道が広がりやすくなり、いびきを抑えられる可能性が高まるのです。
初心者向け舌・喉の筋トレメニュー(1日5〜10分)
以下では、初心者でも無理なく毎日続けられる舌と喉周りの筋トレを5種類紹介します。
難しい動きは避けており、すべて合わせても約5〜10分程度で実施できます。各トレーニングごとに目的、やり方、回数の目安、注意点を解説します。
1. 舌の前後運動
目的: 舌全体、とくに舌根周辺の筋力を高め、睡眠中に舌が喉の奥へ沈下するのを防ぎます(舌の筋力アップで気道の確保を狙う)。
やり方: 口を大きく開け、舌をまっすぐゆっくり前方へ突き出して5秒間キープします。次に舌をできるだけ奥へ引っ込めて5秒キープします(引っ込める際は舌先を上の前歯の裏に当て、そのまま喉の方向へ舌を引っぱるように動かすと効果的です)。前に出す・奥に引くを1回として、この動きをゆっくり3回繰り返しましょう。
回数: 5秒キープ×2方向(前後)を1回とし、1日あたり3回×1〜2セット行います。慣れてきたら少しずつセット数を増やしても構いません。
注意点: 動作中は鼻で呼吸し、舌を動かす際に首やあごに力が入りすぎないようにしましょう。強い痛みや違和感を感じる場合は無理に続けず、一度休止してください。
2. 舌の上下運動
目的: 舌と上あご・下あご周りの筋肉をバランスよく鍛え、舌や軟口蓋(喉ちんこの付け根部分)の筋力向上による気道確保を促します。
やり方: 口を開け、舌を上方向に持ち上げて上あご(口蓋)全体に押し付け、その状態で10秒間キープします。次に舌を下方向、下あごの内側(口腔底)に向けて押し付けて10秒キープします。上下で1セットとして、これもゆっくり3回繰り返します。
回数: 10秒キープ×2方向(上下)を1回として3回が目安です。余裕があれば朝晩など1日2セット行うとより効果的です。
注意点: 上あごに押し付ける際は舌全体をしっかり密着させ、下方向ではあごの力を抜いて舌だけを下げます。舌やあごに痛みを感じたら力を緩め、無理のない範囲で行ってください。
3. 舌の回転運動
目的: 舌を様々な方向に動かすことで舌筋全体をまんべんなく鍛え、舌の柔軟性と筋力を向上させます。舌の可動域を広げることで喉の奥で舌が邪魔になりにくくします。
やり方: 口を閉じたまま、舌先で歯の表面や歯ぐきをなぞるようにして舌をゆっくりぐるりと一周回転させます。
舌で上下の歯列をなめるように、右回り・左回りそれぞれ行うと良いでしょう。舌が疲れてきたら少し休みながら行います。
回数: 口の中を3周回転させる動きを1セットとし、左右回しそれぞれ1セットずつ行います。余裕があればセット数を増やしても構いません。
注意点: 舌を回すときは歯で舌を噛まないように注意しましょう。ゆっくり確実に動かし、速く回しすぎないようにします。顎関節に違和感が出た場合はすぐに休止してください。
4. 舌・あごの運動(母音発声)
目的: 舌や喉周りだけでなく、あごや口輪筋(口の周りの筋肉)など発声に関わる筋肉全体を鍛えることで、喉の気道周囲組織を引き締めます。特に大きく口を動かす発声は軟口蓋や喉の奥の筋肉も刺激し、いびき防止に役立ちます。
やり方: 口を大きく開けて、「あー、いー、うー、えー、おー」とゆっくりはっきり発声します。声に出すとともに、顔全体と口、喉の筋肉を使って大げさなくらいに口腔内を広げるのがポイントです。これを一通り発声したら数秒休み、もう一度繰り返します。
回数: 母音の連続発声を3回繰り返すのが1日の目安です。一つひとつの音をしっかり発音し、慣れてきたら声を出さずに口パクで行っても構いません(就寝前など静かに行いたい場合)。
注意点: 顔や首に余計な力を入れず、リラックスした状態で発声しましょう。また、舌やあごを痛めないように無理のない範囲で口を開きます。
顎関節症のある方は様子を見ながら軽めに行ってください。
5. 頬の膨らまし運動
目的: 口周り(頬や口輪筋)の筋力を鍛え、睡眠中に口が開いて舌が後方へ落ち込むのを防ぎます。頬の筋力アップは口腔内圧を高め、気道を安定させる効果も期待できます。
やり方: 口を閉じた状態で両方の頬を風船のように大きく膨らませて5秒キープします。次に一転、頬の筋肉を使って口をすぼめ(頬をこめかみに引き寄せるように凹ませ)5秒キープします。膨らませる・すぼめるを1セットとしてゆっくり3回繰り返します。
回数: 5秒キープ×2パターン(膨らませ/すぼめ)を1セットとして3セット行います。これを毎日1回実施しましょう(余裕があれば朝晩2回)。
注意点: 息を止めず、膨らませる際は鼻からゆっくり吸い、すぼめる際は鼻からゆっくり吐くようにすると苦しくなりません。めまいを感じたら途中で呼吸を整えてから再開しましょう。
継続と効果を高めるポイント
ご紹介した5つのトレーニングはいずれも舌や喉に適度な負荷をかけて筋肉を強化する動きです。個人差はありますが、一定期間継続すれば多くの方でいびきの軽減が期待できます。効果を実感するまでに数週間~数ヶ月かかることもあるため、根気強く続けることが大切です。研究では少なくとも1日10分程度のエクササイズを3ヶ月間続けるといびきの改善が見られるとされています。一日のどの時間に行っても構いませんが、就寝前に実施すると習慣化しやすいでしょう。各運動と*毎日継続することが何より重要です。無理のない範囲で続け、もし筋トレを試しても改善が見られない場合は睡眠時無呼吸症候群など他の原因も考えられるため、専門医に相談してみてください。
参考文献・出典: いびき改善の舌筋トレに関する専門医の解説mainichigahakken.netmainichigahakken.net、国内外の睡眠クリニックによる指導内容および研究報告hikarigaokaclinic.comhikarigaokaclinic.comsleepfoundation.orgなど。
これらのエビデンスも踏まえ、安心して継続できる範囲で日々のトレーニングに取り組んでみましょう。